英語IR協会準備室

英語IRコンサルタント西村麻美のブログ

東芝メモリ売却、やはり影の主役はアップル

iPhone向けNANDフラッシュメモリーの安定確保のためにアップルが東芝メモリを買収というのは理にかなっている。

アップルのキャッシュ保有額は2017Q2時点で日本円にして28兆円近くまで積みあがってて、自社の戦略と先行きのNANDフラッシュメモリーの需要を考えると良い投資になる。

WDとの訴訟問題や各国の独禁法の審査に時間がかかるなどの課題はあるがいい加減決定しないと東芝メモリの技術者の流出が止まらないかも。

 

東芝メモリ売却先決定の先延ばし、やはり代替案で資本増強か

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13日の取締役会では売却先を決定しないとの報道。

提携相手のWDとは議決権の比率で折り合わず。

来週にかけて日米韓連合と交渉再開し、売却決定とあるが

おそらく無理と現経営陣は判断しているような気がする。

各国での独禁法審査が最低でも数カ月、中国市場では年単位でかかる。

と考えるとどう考えても2018年3月末に債務超過を解消というのは不可能。

(現時点で2018年3月末は4100億円の債務超過と会社予想)

 

推測するに現経営陣は資本増強するという代替案を考えていると思う。

すでに東芝は特設注意市場銘柄指定なので公募増資はできない、が、

三者割当増資、デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)など

をして資本増強をする事は検討していると思う。

 

ファイナンスの他にグループの資産の売却は当然するつもりだろう。

 

現時点での東芝時価総額は1兆4000億円。4000億円強のファイナンスにメインバンクをはじめ銀行は反対が予想されるが、

 

東芝原子力ビジネス、とくに廃炉をになっている事からすでに国策会社に近い役割をしているので、政府圧力で強引に第三者割当増資を引き受けるようにプレッシャーをかけるのだろうと思う。

 

そもそも東芝の業績が急激に悪化した原因はアメリカの原発を買収した

ことなので、これは企業としての判断というより国の意向に沿ったもの

であろう。

 

そう考えるとこの企業に民間企業としての自立した経営判断を求めるのは無理がある。

 

WD以外の会社に東芝メモリを売却となるとこれからWDとの裁判はますますお金と時間がかかるのが目に見えているので、ますます自立は無理なのかもしれない。

合弁相手のWestern Digitalが東芝メモリーを売却予定にAppleの意向で番狂わせか?

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Apple mounts a full-court press for Toshiba’s chip business, waging battle with Western Digital” (CNBC.com 9/8/2017)

 

Apple東芝メモリーにとっての一番の上客で、東芝メモリーはiphone向けにNANDフラッシュメモリーを供給しているが、Western Digitalが将来的に東芝メモリーの議決権の過半数を取る事になったら、東芝メモリーからの供給は中止したいとの意向。

 

現時点では、Western Digitalの出資はマイノリティ投資という事で話合いをしているが、将来的に議決権の過半数を取るのはWestern Digitalのシナリオにあると思う。

 

そうなったらAppleからの売り上げをすべて失う事になり、相当な痛手。

 

しかし、Western Digitalがマイノリティ投資のままであるならApple東芝メモリーを5兆円で買いたいとの意向。Western Digitalからのオファーが1兆9000億円なので、約2.5倍のオファー金額。

 

5兆円というのは東芝メモリーの実力を正当に評価した金額だと思うし、Appleに売却すれば確実に東芝東芝メモリーという稼ぎ頭を失ってもグループ全体のリストラは上手くいくだろう。

 

一番のネックは本来なら8月末までに売却の決定をしなければ、今期末時点で債務超過を解消するのに間に合わず、東証の規定で、上場廃止になるギリギリのタイミング。

 

果たして東芝の現経営陣がスピーディーな経営判断をできるかが一番の問題。

 

東芝も世界最強EMSメーカーの鴻海の傘下に入って、 鴻海、アップル、アマゾン同盟で生き残るのが最善の道

diamond.jp

東芝と同社の会計監査を担当するPwCあらた監査法人は9日、2017年3月期の有価証券報告書(有報)の監査意見を「限定付き適正」にすることで合意した。あらたが提携先の米監査法人との調整を終え、確定した監査意見の内容を東芝に伝達。東芝も受け入れを表明し、10日午前に正式に決めたうえで関東財務局に有報を提出する。

”限定付き適正”って何?


これは明らかに政治的なプレッシャーがかかったでしょう。
PwCが合意しないと東芝上場廃止になるはずだったから。

 

せっかく首の皮一枚でつながったので、この際鴻海陣営傘下に入るのが
最善でしょう。これでまた半導体技術の国外流出が問題だというキャンペーンを現政権がやったらもう東芝はアウトです。

 

鴻海のテリー・ゴウに立て直してもらうか、このまま政権とべったりのひどい経営者を交代させないまま東芝メモリーの都合よい買い手が見つからず
潰れるか。

 

これから東芝Western Digitalとの裁判費用、株主訴訟でいくらかかるかわからない。米原子力事業からの損失もまだ出てくるはず。
国際裁判所での結果がはっきりするまで年単位の可能性がある。
こんなにリスクが高い東芝メモリーを東芝の思惑どおり2兆円で買いたい
買い手がいるか?

 

なぜWDのライバルであるブロードコム東芝メモリー買収から撤退
したのか?ー リスクが高すぎるから撤退したという事を東芝
現経営陣は理解してるのか?

 

2兆円で東芝メモリーを売るのは捕らぬ狸の皮算用になる可能性が高い。
資金繰りは週単位まで逼迫しているのに。

 

2017年3月末で5800億円の債務超過だったのを東芝メモリー売却せずにどうやって2018年3月末までに解消する具体案があるのか?と思っていたけど、
8月10日の会見では2018年3月期も2期連続で赤字になる可能性を現社長は
示唆した、イコール上場廃止はまぬがれないとの判断でしょう。

 

8月10日付の終値ベースで東芝時価総額は1兆2372億円。
東芝メモリーに2兆円の企業価値があるとしたら、東芝メモリーを
除く東芝グループの価値はマイナス7628億円。

 

マイナス7628億円の価値しかないと市場は判断している。

 

もうとっくにメインバンク数行は貸倒引当金の積み増しをしている。
つぶれてもらって構わないというスタンス。 

 

半導体技術が国外に流失したら困ると現政権は言っているけど、
とっくにサムソンとの技術格差は埋められません。

 

東芝グループが破綻してグループ従業員15万人が露頭に迷う
方が社会的インパクトが大き過ぎる。

 

 

 

アマゾンのホールフーズ買収 止まらないアマゾンの勢い

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金曜日のアメリカ市場での一番大きな話題はアマゾンによるホールフーズ(アメリカの高級

オーガニックフードのスーパーマーケットチェーン)の買収だった。

 

買収価格は137億ドル(約1兆5200億円)アマゾンにとっては過去最大規模の買収。

 

アマゾンの狙いは食品の配送網取得だと言われている。 アマゾンはこの分野への参入を試みてきましたが、他分野と違い上手くいっていなかったという背景がある。

 

実際にアマゾンはシアトルに食品スーパーの実店舗をもっており、ホールフーズ買収はアマゾンに

とってもホールフーズにとってもwin-winな買収であったと思う。アマゾンのユーザーとホールフーズの顧客はセグメント的にかぶっていると思われ、食品配送網のみならずシナジーが見込めるとの勝算からの買収計画だと思う。

 

またこの買収にあたりアマゾンは自社の保有する現金215億ドルからの買収なのでファイナンス

予定もない。

 

アマゾンは今や単なるオンラインリテーラーではなく、アマゾンの提供するサービスを抜きで生活する事はできないというほど私たちの生活に浸透している。

 

私がアマゾンに注目している理由はAWS (Amazon Web Service)。オンラインリテーリング事業の約10倍の利益率を誇り、また独走状態と言っていいほど強いビジネス・モデルだ。

 

まさに向かうところ敵なしといったアマゾンの強さの源泉は徹底した顧客至上主義とスピードだろう。

アマゾンのホールフーズ買収により古い業態の小売業界の終わりの始まりだと言われており、顧客ニーズを満たすためにテクノロジー投資をしていかないと生き残れない時代に突入したと言っていいだろう。