英語IR協会準備室

英語IRコンサルタント西村麻美のブログ

上場日本企業のコーポレート・ガバナンスに影響を与えたアクティビスト・ファンド

アクティビストという言葉が日本株市場で使われるようになり数年経つが、まずアクティビストの定義は野村證券の証券用語解説集によると

 

株式を一定程度取得した上で、その保有株式を裏づけとして、投資先企業の経営陣に積極的に提言をおこない、企業価値の向上を目指す投資家のことをアクティビストという。 いわゆる「物言う株主」で、経営陣との対話・交渉のほか、株主提案権の行使、会社提案議案の否決に向けた委任状勧誘等をおこなうことがある。

 である。

現在日本株に投資するアクティビスト・ファンドで有名なファンドはアメリカのサード・ポイントがある。サード・ポイントの運用資産は175億ドルで、1995年のファンド開始以来の平均リターンは15.7%。

サード・ポイントは日本株のコーポレート・ガバナンスに大きな影響を与えたファンドなので以下にまとめる。

❐ 2013年5月にソニー株を6%取得。”エンタテインメント部門の株式の15~20%を公開し、得られる資金でエレクトロニクス部門の立て直しに使う事”を提案。しかし、ソニーはエンタテインメント部門と他部門はシナジーがあるとして分離提案を拒否。ソニー側は妥協案としてエンタテインメント部門の財務数字のディスクロージャーの改善を約束。

❐  2014年後半にファナック株を取得。当時ファナックはIRや財務体質(キャッシュをためこんで、株主還元が低い)事を批判されており、トップは投資家と直接会う事も殆どなかった。2015年にサード・ポイントのCEOはファナックのトップと会談をし、2016年4月から総還元性向を最大80%に拡大すると約束し、IRも改善。

❐  2015年からブン&アイグループ株を取得。業績が悪化している傘下のヨーカ堂を分離させて再建すべきだとの提案の他、7-11の井阪社長を交代させる人事案にも反対。セブン&アイの取締役にレターを送り、”鈴木会長が息子の鈴木康弘氏を7-11の社長に就けるという噂があるが、トップとしての判断力に重大な疑問がある”と世襲人事を批判。鈴木会長は引責辞任し、引退。

サードポイントの株主提案以降日本でも株主提案の数が年々増えており、グローバル基準のIRがますます求められている。

 上場日本企業の経営者にとり、アクティビスト・ファンドはうるさい存在であるかもしれないが、コーポレート・ガバナンスの改善から株主利益の拡大につながるので必要な外圧である。コーポレート・ガバナンスをないがしろにしたいい例が東芝である。

 

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