英語IR協会準備室

英語IRコンサルタント西村麻美のブログ

なぜ英語IR協会を設立しようと思ったか

なぜ日本において英語IR協会を設立する必要があるか

 

東京証券取引所時価総額ベースでは世界第三位であるが、Global Financial Centres Index (GCI)では、シンガポール、香港より低い5位にランクされている。金融市場としての東京の競争力の低下はキャピタルゲイン課税や取引所の時間の短さなどが考えられるが、上場企業の英語対応の遅れも東証地盤沈下の一因であると私は考えている。日本の株式市場に海外からの投資資金をもっと呼び込むためには上場企業のIRの国際化が欠かせないと考えている。

これはまったなしの状況である。2017年は中国の株式市場の国際化が進んだ年であった。A株がMSCI新興市場指数へ組み入れられ、中国の証券会社の海外進出が解禁された。中国は科学技術分野では日本、米国ともに抜き世界トップレベルになった。

世界の上場企業の時価総額ランキングでトップ20から日本企業は消え、中国企業は4社もランクインしている。これからもますます中国企業でグローバルにIPOをする企業が出てくるだろう。

もしかしたら近い将来MSCI Japan指数というものがなくなり、MSCI Chinaという指数が出てきて、日本株専門の外国人ファンド・マネージャーがいなくなるのかもしれない。上場日本企業の経営者は外国人投資家に選ばれるためにはもっと危機感を持った方がいい状況なのだ。

インベスター・リレーションズは諸外国ではプロフェッショナルな仕事である。MBAを持っている割合が多く、アナリスト・レベルの知識を持ちCEO、CFOの両方にリポートし、経営、財務に精通しており、キャリア・パスとして確立している。

日本企業ではどうかというと、一部のグローバル企業を除き、広報や経営管理部の人達が片手間にやっている事が多く、いわゆる本流の人達がやる仕事ではない。たまたま数年間IR担当になりましたという人達が殆どなので、財務分析の基礎的な事もわからない人達が多い。IRのプロフェッショナルがいない事に加え、外国人投資家対応になると外部の通訳に頼りっぱなしである。

上場日本企業の株主のうち30%強が外国人投資家であるが、さらにアクティビスト・ファンドが増えている。昨年11月の東芝の3000億円の第三者割当増資を引き受けたのは米アクティビスト・ファンド2社、またGPIFの委託運用会社もアクティビスト・ファンドが入っている。つまり、グローバル基準のIRが求められる時代になって来ている。

IRを担当している人材で、通訳なしで自社のいるマーケットの成長性、競争優位性を経営戦略、財務戦略に落とし込んで説明し、中長期的に「投資リターンを生み出すことができる」ことを外国人投資家に説得できる人がどの位いるだろうか?

ROEはすっかり浸透してきたが、資本コストになるとどうだろうか?企業価値の向上という事は良く言われるが、外国人投資家が最も重視するのは単なるROEではなく、資本コストを上回るROEであるという事をIR担当者で認識できている人の割合はとても低い。

上場日本企業ではIR業務というと開示義務というとらえ方をされるのが殆どであるが、IRは自社株のマーケティングという大きな役割がある。上場日本企業に業績連動、または株価連動の役員報酬制度も増えてきているが、株価を適正な水準まで上げるためには戦略的なIRに取り組むべきなのである。

昨今投資家とのエンゲージメントという言葉が良く使われるようになり、企業と投資家との建設的な対話というものが意識されるようになってきている。では上場日本企業と外国人投資家とのエンゲージメントはどうだろう。通常は証券会社のアレンジで海外の機関投資家訪問をするロードショーが行われるが、大抵の場合は通訳を連れて行く事が多い。しかし、これが中国人経営者だったらどうか。彼らはアクセントの強い英語でも気にせず堂々と通訳なしでのぞむ事がほどんどである。

通訳を介する事が不利であると考えられない経営者は考え方を改めた方がよい。顧客から預かる大切な資金を企業に投資するのに、通訳に頼りきりの経営者と決して流暢ではなくても英語で自分の考えを伝える経営者のどちらを信用するか。投資家の信用を得るために自社の経営方針について英語で伝えられる事は必須なのである。

グローバルに活動する企業、資金調達需要の高い成長企業、外国人投資家を獲得したい企業では国際水準のIRが不可欠であると考えている。実際のところIRのプロフェッショナルなキャリアがあり、かつ通訳なしで投資家と同等のレベルでディスカッションができる人材はほぼいないのが現実である。

外国人投資家向けのIR活動をサポートするために英語IR協会を設立し、企業内の人材の育成、教育をする事が急務であると私は考えています。

 

英語IR協会として手掛ける業務は以下になります

 1) 外国人投資家対応のIR業務のコンサルティング

 2)   IR担当者向けの財務分析、IRに必要な英語の研修

 3)  上場企業経営者の英語でのプレゼンテーション、スピーチのコーチン

お問い合わせはinfo.englishIR@gmail.comまで

 

西村 麻美 (にしむら まみ) 

東京都出身。獨協大学国語学部英語学科卒業。コーネル大学経営大学院修士課程修了。専攻はファイナンス

大学卒業後メリル・リンチ証券東京支店に就職。コーネルにてMBA修了後日本に帰国。HSBC 投信投資顧問、アライアンス・バーンスタイン東京支店にてアナリスト、ファンド・マネージャー、プロダクト・マネージャーとして勤務。

リーマン・ショックの一年後、子どもの学童年齢に合わせて退職しフリーランスへ転身。投資リサーチ、IRコンサルティング、IR、経営に特化した通訳、翻訳などを経て、英語IRコンサルティング、IR担当者、CEOのための英語コーチングに従事。現在英語IR協会設立準備中。